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東京高等裁判所 昭和24年(新を)1700号 判決 1950年6月30日

被告人

古屋力吉

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

論旨第二点について。

然し乍ら弁護人引用の原審第一回公判調書に記載の通り、検察官は本件公訴の暴行事実に関してその第一第二の如く矢崎準之助、高橋高治、古谷幸太郎を殴打し若くは足蹴にした事実を云々によつて情状について本件被害者高橋高治が暴行を受けその十二時間後に死亡した事実を云々によつて各立証する旨述べて居ることは刑事訴訟法第二百九十六条に所謂証拠により証明すべき事実を明らかにして居ると謂うことを得べきであつて、所論は独自の見解に基いて原審の証拠調を論難するものであつて到底採用し難い。又刑事訴訟規則第百九十八条第一項の規定たるや単なる裁判所の自由裁量権を認めたものであつて、被告人又は弁護人に対して証拠により証明すべき事実を明らかにすることを許すべきか否かは裁判所の自由裁量に委せられたものと解すべく、これを許さなかつたとしても毫も違法であると謂うことができない。然るに本件に於ては、原審公判調書の記載からみて、裁判所が被告人又は弁護人に証拠に対する冐頭陳述を許さなかつたとか又その機会を与へなかつたとかいうことを認むべき何ものもないのであるから、此の点の論旨も又その事由がない。

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